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2  山下公一さん

田舎モンの旅だより

   『たんじゅんさん』 こんにちは

    第2回   山下公一さん(福岡県)

 ・ 草を主な炭素源、廃菌床は糸状菌源として補助的に

 ・ 比較試験しながら、着実にすすめている



『たんじゅんさん』 紹介

 福岡県の南、熊本県に近い所に大牟田市がある。そこの櫟野(いちの)で農業をされている山下公一さん(53才)。
 家族は、父と、妻、一男一女の子と、5名。
 田んぼは1町2反(実動7反)、畑は、8反。
 農業専従は公一さんだけ。

 民家が点在する、なだらかな山里。畑や田の間をを縫うように、軽トラがようやく通れる道がうねる。田も、畑も、何か所にも分かれ、畔も曲がりくねっている。
 そこで、山下さんは、コツコツと有機農業を続けてきた。

 7年前、有機農業についてしゃべってくれと頼まれたのがきっかけで、「櫟野(いちの)田んぼの会」が生まれ、いま40名ぐらいの会員がいる。半分が消費者。山下さんは、そのお世話をしながら、みんなと農と食の勉強会も続けている。

 「炭素循環農法」は、5年前、2004年『現代農業』の記事で知った。
 しかし、<土の肥沃と土の浄化が、同時に進む>ということが、その時は、全く理解できなかった。

 2年前から、肥料を混ぜたりしながら、この農法をマネて試験をしてみた。
 その結果、これはいけそうだ。全面的にやってみるしかないとして、1年前(昨年秋)から本格的に、「炭素循環農法」をはじめる。
 今年春、4月中旬、林幸美さんに来ていただいて、畑を見てもらった。そのときは、野菜の出来にかなりムラがあったという。

 訪問したのは、10月12日(2009年)、まだ九州は暑く、稲刈りの真っ最中、農家にとっては忙しい時だった。
 

高炭素資材を工夫

 山下さんは、昨年秋から、肥料の使用をやめて、全面的に「炭素循環農法」への転換を始めた。
 その際、従来の畑とともに、稲を刈ったあとの田の一部を、「炭素循環農法」の畑に使うことにした。田は、畑に比べて、チッソをあまり入れていないので、早くこの農法の成果が出ると期待したからである。

 高炭素資材として、草を主に使い、廃菌床は補助的に用いている。

 この地区で手に入る廃菌床は、エノキを栽培した、コーンコブに、ビートとフスマを混ぜたもので、独特の匂いがある。
 「たんじゅん農法」の資材は、炭素資材と糸状菌の両方の供給ができる<廃菌床>がよく使われている。しかし、同じ廃菌床でもイヤな匂いのするものは、あまり使いたくない。

 それで、廃菌床は糸状菌源として使うことにして、高炭素資材源としては、草や、野菜くず、紙など、ほかに手に入りやすいものをおもに使ってみた。

 草は、土手などの草を刈ったものを、畑の空地まで業者がタダで持ってきてくれる。
 それを山に積んでおき、枯れてきたら、刈り払い機で20cmぐらいに切断して、それを畑に撒いている。 


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業者の持ってきてくれる草の山

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草刈り機で切断したもの
 
 草を撒くと、草の種を撒いているようなもの、後が大変といわれるが、そんな心配はないと、山下さん。
 種は、その土地にあったものしか、発芽しない。
 土がよくなれば、ますます、そんな心配はない。
 草を入れれば入れるほど、畑の草は減ってくるそうだ。


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切った草を敷いた畑

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玉ねぎ苗畑に

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苗がそろって育つ

 実際、草を敷いた畑を見せてもらったが、それは、苗を育てる畑に使っていて、その一部は、玉ねぎの苗が育っていた。
 「たんじゅん農法」をやるまでは、苗がうまく育たなかったのに、今年から、苗がそろって芽を出し、育つようになったそう。
 確かに、見せてもらった畑に、玉ねぎ苗がきもちよく、そろって育っていた。草も、少なかった。

 投入量は、畑で、10アール(1反)あたり、草が2トン、田が1トンくらい。
 炭素資材をもっと入れたいが、現状では、草は、それが精いっぱいだそう。



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野菜くず、段ボールも炭素資材

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段ボールにも糸状菌が一杯

 それで、炭素源として、すぐ使わない畑には、野菜くずや段ボールを足している。
 野菜くずは、市場からもらってきたもの。
 段ボールは、表面が撥水処理がしてあり、そのまま、畑に撒くと、その下が腐敗しやすくなるので、空き地に数か月、野ざらしにして、分解しっかったものを、畑に撒いている。畑の段ボールは、写真のように、糸状菌がびっしりと生えて、貴重な炭素源ともなっている。

 地元で手に入る高炭素源を、何でも探し出し、活かして、微生物の餌として、畑に届ける。
 それが「たんじゅん農法」の農家のしごと。
 それを着実に実践しておられる姿をみせてもらった。

働き者で、お世話好き
 
 あちこちに、田や畑があるようで、軽トラで案内してもらった。 田が1町2反(実動7反)、畑は、8反。
 その一部は、「田んぼの会」に使ってもらいながら、残りの田畑は、基本的には、家族は手伝わない。山下さんが一人でこなしているという。
 といっても、畑の除草や播種など、多くの人手が必要な場合、「田んぼの会」に要請をして、援農をお願いしているそう。

 「田んぼの会」の会員は約40名。田植えや稲刈りなどの特別な時を除けば、毎回十数名が援農に参加している。

 さらに、野菜部会とも言える、4名が別に、週に1回程度、山下さんの仕事を手伝っている。

 そのほか、「田んぼの会」以外にも、体験参加を受け入れたり、会の知人や団体などが、加わることもあるそうだ。


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まだ、山下さんの稲は葉が緑

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しっかりした穂が黄金色に

 水田は、田植え時期だけ、以前からやっていた赤木歳通さんの「菜の花農法」を受け継いで、やっている。
 4月、菜の花が咲いているときに、草を刈って、それを田にすきこみ、それから水を入れて代かきをし、田植えをする農法。すき込んだ草が腐敗するときに発生する有機酸の力で、初期の雑草の発芽を抑えて、除草効果をあげている。
 その点では、水を腐敗させない「炭素循環農法」とは、逆のやり方。

 田植え時期以外は、「炭素循環農法」の考えでやっていて、見せてもらった田は、まだ刈ってなくて、よそのお宅の稲は刈ってあったり、まっ黄色に葉がなっている(上の左の写真の奥の田)のに、山下さんの田の稲だけは、穂は黄金色になっても、まだ、葉は緑を保ち、まだまだ、光合成をしている、元気な稲だった(写真手前)

 葉が黄色の稲は、もう、葉が<枯れて>いるから、実の充実は停止している。
 それに対し、葉が緑の稲は、葉がまだ光合成をし続けていて、実に栄養を蓄えつつある、成長している稲。
 米の収量は、この方法で、反あたり8俵だという。
 ともかく、気さくで、お世話好きな山下さん。その上、農業が大好き、働くのをいとわない方だから、とても忙しい中を、嫌な顔もせず、みんなを暖かく受け入れ、農を楽しみながら、みんなとすすめている。

 それでいて、ち密に、比較試験をあれこれとしている面もある。

 「たんじゅん農法」に変えるにも、生活がかかっているので、全面的に肥料をやめることはしないで、少しずつ、肥料を減らして、生の廃菌床を増やしてみた。それでもできることを、数年かかって確認して、はじめて、全面的に、「たんじゅん農法」に切り替えている。

 また、苗床をいろいろ用意して、どの資材が苗床に適しているか、試験もして、比較している。(後述)

 さらに、市販のホウレン草と、「たんじゅん農法」のホウレン草の二つを放置しておくと、どうなるかの比較もしている。
 市販のものは、一週間もたつと、葉がとろけてくるが、「たんじゅん農法」のほうは、葉が枯れてくるだけと、大きく異なる。
 腐敗と発酵の野菜の違いが歴然とわかる、だれでもできる実験だが、案外みんなやらない。
 そんな”すぐれた実験”を淡々とやる山下公一さんである。 

 田を畑にして始動

 畑を見せてもらった。畑は、昨年秋から肥料をやめ、「たんじゅん農法」で全面的にやっている。

 最初に見せてもらったのは、昨年までは田んぼだったの畑。
 「たんじゅん農法」の畑に、田を使ったのは、理由がある。
 畑よりも田は、肥料(チッソ)の投入量が少ないので、その分、土中に残留している腐敗が少なく、転換が早く、適していると考えて、それを試験したかったからだ。

 昨年、その秋、最初に育てたブロッコリーは、虫に食われ、散々だった。
 今年、春、林幸美さんに来ていただいて、畑を見てもらったときも、野菜が不ぞろいで、あまりできがよくなかった。
 その時、林さんが、「秋にはできるようになりますよ」と言われた。
 
 そして、その秋に畑がどうなっているか、それを検証のため訪問したわけではないが、ちょうど、転換1年目の結果を見せてもらうことになった。


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田から転換1年の畑

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苗次第で虫害が出る

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植えつけ後は元気に

 畑には、白菜、キャベツなどの冬野菜の苗が、ビッシリと植えられていた。
 春にホウレン草は採れなかったが、秋には、かなりよくできるようになった。 
 だがしかし、虫の害にやられたところや、生育が不揃いのところなどがあり、まだまだ完全ではない。
 土の浄化は、途中段階。これから、浄化がもっとすすめば、生産量も上がってくるし、虫の害も減ると、みえてきた。

 今年4月13日の勉強会の時に参加された方に、来年、同じ日に来てもらって、同じホウレン草がどうなってきたかを、見てもらいたい。きっと、見違えるほど、畑が生き生きとしているに違いない。と山下さん。その目は、子供のように輝いていた。


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冬野菜の苗は順調に育っている


ゴボウもそろって育ちつつある

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土の浄化と作物の生産増が同時にできる… 

 土がおいしければ野菜も
 
 夏に野田さんという若者が静岡から来て、畑の土を食べていった。その彼が一番おいしいといった土は、山下さんがナスを育てている畑だった。

 その畑のナスを見せてもらった。
 背の高さ以上のナスの木が、次々とナスをぶらさげている。

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まだまだ元気なナス

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甘いナスがつぎつぎ

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天に向かって花芽つける

 そのまま生で食べると、甘い香りと味がやさしく口に広がる。
 山下さんが求めている野菜の味だろうか。
 それとも、心そのままの味なのだろうか。
 
 ためしに、土を食べてみた。
 確かに、いい味、いやみや、苦み、臭みのない、
 甘く、それでいて、さっぱりした、さわやかな味。
 土の味と、野菜の味は、同じなのだろうか。

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冬至カボチャ
秋になって実をつける

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冬に向かって
値がいいカボチャ

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日照りが続いたのに
里芋もよくできていた
 冬至カボチャがなっていた。
 なかなか、作りにくい、できにくいといわれる、時期外れのカボチャで、希少価値があり、値がいい。
 それを、今年植えてみたら、案外簡単に、畑一面によくできた。

 それは、廃菌床によるこの農法の力なのか、・・・、
 里芋も、よくできた。
 今年は日照りが続き、みんな里芋の出来が良くないかもと、心配されたが、里芋も、よくできたようだ。

苗床の土も腐敗と発酵
 
 山下さんは、いろいろな育苗土で、発芽試験をしておられた。
 

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左 市販の土と田の土
右 市販の土

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左 廃菌床と田の土
右 廃菌床
     
 その結果からみると、市販の育苗土を用いると、育ちはいいが、幼い苗の段階で、虫に葉がやられている。市販の土には、成長促進のための肥料が含まれ、それが、虫を呼んでいるからであろう。

 一方、廃菌床を入れた土では、生育が遅れているものの、虫の害はみられない。

 「たんじゅん農法」では、畑の土を、発酵型に転換するだけでなく、とかく見逃しがちな、苗床の土も、腐敗から発酵型に転換しなと、せっかくの農法も、虫を呼び、畑に移植しても、苗がそのために、いつまでも、虫に食われることになる。

 とても、参考になる比較試験である。

 各地で、苗床としては、市販の育苗土を使わないで、転換後の畑の土を、そのまま使うか、あるいは、ピートモスやくん炭を混ぜて使うなどの工夫がされているのも、この試験からうなづけよう。

今後の課題

 山下公一さんの畑の作物は、半分は、「田んぼの会」のメンバーにわけられ、残りは、グリーンコープ直営店や、熊本の産直店、市場などに出荷されている。

 米は、田んぼの会の会員が、会員一人に対し玄米30キロを5000円で買い上げてもらい、うち、1000円を会費に充当している。
 残りは市場に出し、その売り上げを諸経費に当てている。

 従来は、農薬は絶対だめという姿勢でやってきたが、そのこだわりが、「たんじゅん農法」を始めて、消えてきた。
 長い目で、この農法をやっていけば、おいしくて、しかも、無農薬の生産物が確実にできるようになるという、確信がもてるようになったので、そのためには、今、何をやればいいか、考えるようになった。

 例えば、市販の育苗土を用いているので、畑に移植したとき、苗に虫がついて、やられることがわかれば、その場合のみは、農薬を使うとか、米も、田植え期の草の芽を出させない、除草剤は一回だけ使うとか、割り切れるようになった。

 その農薬の使用は、一時的なもので、2,3年後、この農法を続ければ、それも必要でなくなる。いまは、たちまちの生活を支えるために使うという考えである。

 もう一つの課題は、炭素資材。
 
 高炭素資材を生のまま畑に投入してはいけない。そうすると、チッソ飢餓になると、このあたりでも、農協指導員がいっているそうだ。しかし、そんなことはない。
 資材を腐らせたり、あるいは、畑に深くすきこめば、そうなるが、「たんじゅん農法」をのとおりにやれば、問題ないことを確信してきた。

 しかし、その炭素資材をどう手に入れるかは、ここでも課題である。
 
 草の利用は、炭素資材としては、限界がある。
 草は、チップなどに比べて、炭素量が少ない。
 そのため、相当の草を投入しなければならず、山下さんの畑では、投入炭素量が少ない。(年に、1~2トン)
 野菜の不揃いは、炭素不足の面もあろう。

 全国的に見て、生産性を上げている農家では、投入炭素量は、チップ換算で、年に、10トン近くに達している。
 その点、山下さんは、もみ殻を今後利用したり、また、竹が山にはびこり、問題になっているので、竹をチップにする方法、採算性などを検討していきたいとしている。

 山下さんの今後の夢は、田んぼの会が、ふつうの人が参加して、当たり前の農業を、だれでも、簡単にできるよう、学び、実践し、お世話する場にしていくこと。
 それには、「たんじゅん農法」がいいかもしれないと考えている。
   
 それが広がれば、今問題になっている「CO2削減」が当たり前にできていく。

 その夢の実現のためにも、山下さんは、来春に向けて、みんなに見てもらえ、みんながマネをしたくなるような、「たんじゅん農法」の実績を上げたいと、毎日、畑のお世話を楽しんでいる。

 なお、この訪問のお世話と、当日の案内は、田んぼの会のメンバーであり、その野菜部会の一員でもある、田中さんが補助してくださった。きっと、山下さんのお仕事も、田中さんのような、控えめで、しかも、誠実な方がバックアップしてくださるから、よどみなく、成り立っていっている。

 お二人に、お忙しい時間を割いて、ていねいな案内をしていただき、ありがとうございます。

付記:
山下 公一さん(櫟野田んぼの会)1956.5.6 生まれ
 メール goopa_omuta@yahoo.co.jp
 住所  福岡県大牟田市櫟野(いちの)
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たんじゅん 

Author:たんじゅん 
「虫がつく野菜は、人間の食べ物ではない、虫のエサ。人間の食べ物は虫がつかない野菜。虫も野菜も人も、すべてが生き生きとしている。もちろん、お百姓も未来の大人も・・・」。
それが、自然・天然の仕組みと聞いて、びっくり、納得。
人間の側からではない、天然の側からのたんじゅんな農法は、もしかすると、戦争のない平和で豊かな世界の一つの実験、実顕ではなかろうかと、その実践報告を集めている。
連絡先メールアドレス tanjun5s@gmail.com

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