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3 山口 今朝広さん

たんじゅんさん こんにちは
第3回  山口 今朝広さん  宮崎県綾町

                  09年10月16,17日

生産から販売まで一貫。200戸に毎週届け続けて28年

信頼関係で支えられた産直、技術・心・生命をその中で学ぶ

「たんじゅん農法」は5年目、炭素資材の調達や虫食いが課題

若者の踊り場を用意、2名の研修生と出入りする数名が2~30代




父の開墾した山の畑で28年

 山口今朝広さんの住む町は、宮崎県の中ほど、宮崎市から車で30分ほどの山に囲まれた綾(あや)町。前町長が「自然生態系農業の町」を掲げて、早くから、循環農業の普及に力を入れてきたところ。その町長がなくなって、新しい町長になり、現在は、「有機農業と観光の町」とスローガンを変え、その看板がところどころに立っている。

 山口さんの家と畑は、街並みから少し外れた標高250mの高台、林の中。お父さんが戦後開拓で入って切り開いた2haの畑で、年間25~30種類の露地野菜を栽培している。

 今朝広さんは、農業高校を卒業後、お父さんと共に、12年間ミカンをやってきたが、その後、時代も変わり、野菜作りに転換した。

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山口 今朝広さん

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里芋の畑
 
今朝広さん有機農法で育てた野菜を、直接家庭に届けるやり方で始めた。有機農法で12年間。その後、EM農法で12年。さらに、5年前から、「炭素循環農法」(「たんじゅん農法」)に転換している。
 現在、今朝広さんは59歳。家族は、妻と父。娘3名は農を手伝っていないが、結婚相手(夫)が、「たんじゅん農法」に魅かれており、次が育っているよう。農業研修生を2名受け入れている。畑は、標高240mの山合いに1.8ha。

220戸の「親戚」にそのまま届ける

 28年間、生産から販売まで、一手にやっている。
 最初は、千枚チラシを配ったが、反応のあったのは、2軒だけ。その2軒から届けるうちに、「お客」同士が声を掛け合って広がってきた。
 山口さんが増やそうとしないでも、一時は、野菜を300戸に届けるまでになった。

 しかし、有機野菜(季節のもの、不揃い、天候で左右、ありのまま)を理解してくれる方に絞ることにして、今は、220戸に、週2回に分けて、各家まで届けている。

 一週間のうち、二日は、配送の日。火曜日は、朝9時から夜7時まで、120戸。金曜日は、朝6時から夕方5時まで、100戸。 その家、その家の特徴を考えて、野菜の種類と量を決め、手渡す。その際、代金を計算し、お金をいただく。いないところは、玄関先に置いていく。その集金は次回送り。
 各家で野菜を届けている時間は、平均5分というから、カミワザに近い。

 そういった週2回の配送の準備に、前日各1日かかるので、一週間のうち、畑の作業ができるのは、3日だけとなる。
 週に、栽培が3日、「お客」への宅配が4日、となると、それが楽しくなければ、とても20年以上も続かない。

 口コミで広がった「お客」は、有機野菜に理解があるので、野菜を<商品>と見るのではなく、<命ある食べ物>と考える方。
 季節季節の野菜を、そのまま手を加えず、少々の傷でも構わず届けているそうだ。「おいしいものは他にもあるかもしれないけれど、自然の味はこんなものですよ」と。

 28年たっても、ほとんど「固定客」。変わっていないが、年をとって、ばあちゃんが増えている。しかし、たいていの家は、大家族なので、その間に、2代目、3代目が育って、食べる量が減って注文が少なくなる、といったことはない。

 だから、200戸は「お客」ではなく、今朝広さんにとっては、みんな「親戚」のようなもの。「親戚」のために、野菜を栽培し、それを送り届け、食べていただいている。
 玄関先に、野菜をただ置いていくだけの家もあるが、みんな信頼のきずなで、しっかりつながっているという。

 一口に200戸というが、そこまで増えて、信頼でつながり、配り続けることは、並みの数字ではない。

 では、それだけの大家族の信頼をつなぎとめるためには、刻々の野菜栽培情報や農法についての解説を書いた通信を出しているのではないかと予想し、問うてみた。
 すると、山口さん「そういうものは出していない」「炭素循環農法をやっていることも、ほとんどの人は知らないだろう」という。 200戸の中で、畑の世話に来ている方は、数人だそうだ。

 それでも、たくさんの方とつなぎ止めている秘密は、何か。
 山口今朝広さんとは、どんな方なのだろう。

若者が今年5名も

 農園を訪ねた夜、交流会を開いてくださった。静岡から車で行って、農園を訪問したいが、ごろ寝でいいから、どこか泊まるところはないかと、勝手なお願いをしたら、こういうことになっていた。

 ところが、もっとびっくりした。
 その場に、ずらりと10名以上の方が集まられていた。みんな山口農園に関係した方だという。しかも、その3分の2が、若者なのだ。和気あいあいの食事。何?これはいったい???

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今年来た新人5名

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和気あいあいの会食

 目の前に用意された鍋が、若者の口にパクパク入り、どんどん無くなっていく。それが一方で気になりながらも、「どういうことで、若者が、この場にいるのか」がもっと気になり、箸も取らず、しつこく聞き続けた。

 そのうち、5名の若者は、今年から、この山口農園に来た方。みな35才以下。
 1年前はどこにいたかと聞いてみると、愛知、京都、大阪が1名づつ。後は、宮崎県の日南と宮崎市だそう。

 しかも、みんな農業経験がない。来てから、ここの農業に興味を持ったのだという。
 たしかに、<農業経験がない>からこそ、山口農園の「炭素循環農法」に素直に取り組めているのだろうが。
 あちこちの「たんじゅんさん」を訪ねているが、若い方がこんなに一緒にやっているところは、ほかでは、まだ見ない。

 「この綾町の農家は、どこも、若者が寄ってきているのか」と尋ねると、他の農園にはほとんど若者はいないという。この山口農園だけの特殊な現象。では、その訳は?

 今朝広さんには、カリスマ性はなさそうだ。みんなの中で、静かに話を聞いていて、あまりしゃべらない。みんなを仕切っている、ということもない。自由で和やかな雰囲気。

壁がない、よく話を聴く兄貴

 若者たちに、「なぜ山口農園に居ついたのか」と聞いてみた。
 すると、「なんとなく」という答えしか、帰ってこなかった。
 それでも、しつこく聞いていくと、「今朝広さんは、話をよく聴いてくれ、知ったかぶりがない。一緒になって考えてくれる。それぞれを認めて、受け入れてくれている」。「年を感じさせない、新しいことに挑んでいる。一緒に発見できる。共感できる」。

 一方、今朝広さんに、若者について聞くと、「若い人は、発想がとっぴで、ありそうもないことをいうので、おもしろい。それで、できるかも知れんとやる気になる」。

 「基本的な理論は、炭素循環農法でも、勉強となると、上も下も、年令に関係ない。年は、経験が多いか少ないかだけ。経験から、99.9%虫が来ると思っても、若い方が言うと、0.1%虫が来ないこともあるかも知れんと考える。それが若者とやる楽しさかな」。

 若者は、山口さんのことを、「今朝広さん」と呼ぶ。30歳以上離れた人を、そう呼べる関係っていいなと思った。
 一言でいえば、今朝広さんと若者は、<平らな関係>である。

 今朝広さんは「人に教えるのは得意でない。作物を作るのが楽しみ」という。
 コツコツコツコツ、28年農業をやって、野菜を届けてきた。そして、5年前に「炭素循環農法」に出合い、そこでは「自然が先生」「未来側に先生がいる。知らない方が先生」とも言っている。まさに、ぴったりの農法だ。

 もしかすると、今朝広さんの中で、行き詰まりが起きて、そのとき、あるものに出合って、逆転が起き、「若者が先生」と思える心境に変わり、それから、若者たちが、周りに増えてきたのではなかろうか。

 農園で、経験のあるもの、ないもの。混ざり合って、それぞれの持ち味が発揮されていく。30歳以上の年齢差があるのに、その壁を感じさせない今朝広さんの謙虚さと探究心。

 それが、若者を居心地よくさせ、やる気を起こさせ、また、他の若者を引き付けているのかもしれない。

若者たちの踊り場

 若者たちに、この綾町に来て一番困っていることは?と聞くと、住む家がないことという。1名は、9月まで開墾した畑の隅に山用のテントを張って、電気も水道もない生活をしていたが、10月になってプレハブの倉庫に代わった。他の1名も、農業倉庫で生活している。 

 5名のうち2名は、農業研修制度を利用して、山口農園の研修生にしてもらっている(研修生には国から月13万円が1年間支給される)が、他は、アルバイトをしながら、農業にいそしんでいる。

 そんな中で、若者たちは、山口さんの畑の手伝いをしながら、新しいことを二つ始めた。

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ミカン畑が変身

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大豆

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畑のそばで暮す

 一つは、若者たちの踊り場が欲しいということで、山口さんは、町から山地を2ha借りた。町が、元ミカン畑の放棄地を買い取り、公園にしようかとしていた土地を、無料で5年間貸してくれることになった。いま、若者たち3名が暇を作っては、その林となった土地を、木の根を起こしながら開墾し、畑を増やしている。

 木の茂った斜面を開墾するのは、並大抵のことではない。いままで<農>と縁のなかった若者が、ミカンの太い根をひっくり返すのは、重労働だろう。だがしかし、だからこそ、面白いのかもしれない。

 できた若者の畑は、半年前までは林とは思えないほど、とても清々しい畑。すべて「たんじゅん農法」でやっている。
 もともと土地が汚されていないためか、素直にその通りやっているためか、まだ半年もたたないのに、虫食いもない野菜が、元気に育っていた。山口農園のほかの畑よりも、できがよいぐらいだった。

 もう一つの新しい動きは、稲。

 山口農園は山間の傾斜地にあり、もともと田はない。
 ところが、若者が来て、今年、稲を始めたいと言い出し、町の平坦地に田を3反借りた。その相談にも、山口さんは気持ちよく乗ってくれた。

 山口農園総出で、はじめての田植えは行われた。株間が40cmのゆったりとした田。1反はモチ米、2反はウルチ米。

 訪問したときは、ちょうど稲刈り前で、稲穂はたわわに稔っていた。若者の気が伝わったのか、生き生きとしていて、初めてとは思えないほど、よくできていた。

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今年始めた稲

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よく実っている
 
 これから、全国の「たんじゅん農法」の農園で、若者が生き生きと育っていく、そんな場が広がる。そんな未来が、山口農園から観えそうだ。

転換5年目の現状

 若者の畑の紹介が、今朝広さんの畑より先になってしまった。

 今朝広さんの畑を回って見せてもらうことにする。 今朝広さんといっしょに、若者が3名、一緒に案内してくれる。それだけで、この農園は、豊かだなと感じる。

 畑は、お父さんが終戦後、中国から戻ってきて、森を伐採し、手で開墾したところ。
 ゆるやかにうねる林に囲まれた畑が2ha、あちこちに段々と点在している。
 そこで200戸の<親戚>に配る野菜を栽培している。年間25~30種。

 山口農園には、小川はない。冠水設備もない。天水に頼っている。
 しかし、いや、だからか、病気は出ない。トマトも、キュウリも、うどん粉病はない。葉カビも出ない。病気で困ることはない。 問題は、虫の害。宮崎は南国の地、暖かいために、虫の被害がひどい。

 EM農法だった時も、ものはよくできたが、虫の害は防げなかった。
 そんなとき、5年前、『現代農業』の9月号の「炭素循環農法」の記事を読んだ。

 「虫が食う野菜は、人間の食べ物ではない。虫のエサだ」
 この一言で、何がなんでも虫の食わない野菜をつくりたいと決めた。 

 12年やってきたEM農法をやめて、この農法に、少なくとも、4,5年はかけてみようと決めた。何の迷いもなかった。その10月、廃菌床を取り寄せ、畑に撒いた。
 EM農法は、肥料設計がむずかしい。
 だけど、この農法は、なにも考えなくて、撒けばいい。まるで、花咲爺。無肥料が面白いと思った。でも、この農法は、素人ならやれるけど、プロはやれないなと思うそうだ。

 1年目は、うまくいった。まだ肥料が残っているのか、できもよかった。2年目、生育がまだらに、悪くなり、虫の被害はひどかった。
 次の年、転換3年目(2006年)、虫の被害がやはり出た。

 少し弱気になりかかっていたその年の4月、林幸美さんが、綾町に来てくださった。2,30人ぐらいの勉強会のつもりが、特に山口さんからは声もかけないのに、130人も集まった。綾の町長や熊本からの方もこられた。
その勉強会で、今朝広さんも、自然の原理を再確認して、元気をもらった。

 それから、3年目、4年目、虫の被害はパタとやんだところもできたが、ひどいところも続く。

そして今年5年目。10月の畑の現状はどうか?
10月の畑には、里芋、生姜などと共に、冬に向かって、人参、ブロッコリー、白菜、キャベツ・・・が育っていた。

「炭素循環農法」になって、虫の害が少なくなったとはいえ、野菜別にみると、まだ、白菜、キャベツ、ブロッコリーが難しい。特に、旬を外すと、虫が多い。何よりも、旬の時期に作るべしと今朝広さんは考えている。


生姜畑

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収穫した生姜


葱畑

 里芋や生姜は、特別よくもないが、ふつうにできていた。虫の被害もないようだ。
 ところが、ブロッコリー、白菜、キャベツの出来は、もう一つだった。かなり虫の被害にあっている。
 特に、ブロッコリーは、畑全面、虫に食われて、ひどい。10月初めだから、ブロッコリーは、時期外れということでもない。 

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 正直、転換5年目の畑に期待して、宮崎まで訪ねてきただけに、これは大変と感じた。
 飄々として、明るい、今朝広さんも、この畑の前では、暗かった。
 「炭素循環農法」に替えて、5年目の畑・・・。この状態をどうみるか。 
 今朝広さんは、悩んでいる。
 「宮崎は南国。炭素循環農法でも、虫に食べられるのは避けられないことなのだろうか。収益性のいい、白菜、キャベツ、ブロッコリーを作らず、小松菜、大根菜など、虫のつきにくいものを作るべきだろうか。こんな状態が続くなら、まだ、EM農法のほうがましだ。EM農法なら、やはり虫に食われるが、いまより、もっと野菜のできがいい。野菜がきれいだし、ナスは、一か所から3本出た。生育がいいと、虫の被害も気にならない。炭素循環農法では、徐々に生育ができるようになったが、まだまだだ」。

 今朝広さんの中で、南国での「炭素循環農法」の有効性に疑問が出てきている。

過去から見る、未来から観る

 こんな山口農園のいまの姿が、しかし、若者にとっては大きなプレゼントになっている。若者たちは、今朝広さんを交えて、それこそ、対等に、真剣に話し合う、いい材料だ。

 この農法は、ブラジルでもやられている。南国だから虫は仕方がないと、言い切る前に、やることはないだろうか。
 壁にぶっつかったら、原理に戻って観てみる。

 人間は<考える動物>である。
 ただ、考えていることは、過去の経験、知識、データに基づいている。
 人間の大脳は過去の集積。しかし、その過去の集積は、大自然からみれば、まだまだ不完全なもの、一面的なもの。間違い多いものではなかろうか。過去から未来を考えてみても、過去が間違っているなら、未来も間違う。

 では、ホントのことはどこにあるのか。それは、過去の側、人間の側にはない。
 自然の側にある。未来側にある。
 自然の側から、未来側から、観てみると、どうか。

 「みんなが生き生きしているのが自然。我慢しているのは自然ではない」
 「虫が食う野菜は、虫のえさ。虫の食わないものが、人間の食べ物」

 もしも、この原理が本当であれば、ブロッコリー畑は、虫が喜ぶ状態、腐敗型になっていることを示している。人の食べ物にならないものは、自然界のピラミッドの最低段階に降りていくように、虫や微生物が協力してくれている。
 炭素/チッソ比が、40以下になると、腐敗型の土になる。
 このブロッコリー畑の土は、5年「炭素循環農法」をやってきても、腐敗型であるとすると、その原因は何か。

 いろいろ聞いてみると、つぎのことがわかった。
 ブロッコリーの畑は、その前は、大豆を植えて収穫した。大豆の前は、里芋だった。
 炭素資材は、その里芋を植える前に、入れたきり、あとはあまり入れていない。

 でも、里芋と大豆はよくできた。
 そのあと、ブロッコリーを植えた。
 となると、ブロッコリーを植えた土は、大豆のチッソが残っているところ。その上、炭素不足。だと、炭素/チッソ比が、低くなっているのではなかろうか。

 もし、そうなら、発酵型の微生物のエサ不足とともに、チッソ過多で、腐敗が起きやすい。それが原因であれば、炭素資材をたくさん与えれば、問題は解決するだろう。

炭素資材の量と作物

 炭素資材の投入量を聞いてみると、山口農園では、廃菌床を、反(10a)あたり、昨年は1トンぐらい入れたそうだ。

 今年は、<虫一匹いない>完ぺきな農園をめざし、昨年の2倍から、3倍、廃菌床を入れた。キュウリは、そのせいか、2倍ぐらい今年は取れた。

 白菜、キャベツのところは、やはり2倍入れたが、どれだけ取れるか、これからだ。白菜、キャベツには、虫はすでについていた。ブロッコリーは特に虫の害がひどい。

 EMから切り替えて、硝酸態チッソが年々下がってきて、3年目で、3~5に、今年は、1を切ったという。下がってきて、そのせいか、小松菜はおいしく、うまく育っている。

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人参畑

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キャベツ畑

 ただ、全体的に見て、廃菌床をドカッと入れたところと、少ししか入れてないところと、比較してみても、収穫量は、その量に比例しないと、今朝広さんはみている。

 全国のあちこちの畑を回ってみて、炭素資材の量は、さまざまだ。
 ただ、満足のいく作物ができているところは、考えている以上に、炭素資材を入れる必要がある。(少なくとも、土ができあがるまでは、すなわち、発酵型の微生物が畑を覆いつくすまでは)

 その目安は、もとの畑の土が明らかにまだ見える、炭素資材がまばらにしか見えない状態では、炭素資材は足らない。全面的に炭素資材が覆うぐらいまで投入する。それは、相当な量となる。

 年に炭素資材が1反(10a)あたり、1~3トンぐらいでは、畑を炭素資材で覆うことなどできない。
 この「たんじゅんさん訪問」第一回の愛知の津島市の稲垣正貴さんも、はじめは、そのぐらいでいいとしていたが、やってみると、一度に、炭素資材を反当1トン、一作で3トン、一年で10トン近く入れて、満足な状態に畑がなるのではないかとしている。

 そのために、1月半か、2月おきに、稲垣さんは、チップを畑に反当1トン近く撒いている。稲垣さんの畑は、作物以外は、全面チップで覆われ、土が見えない。

 勘違いしがちだが、<炭素>が1トンと、<炭素資材>が1トンは同じではない。<炭素資材>のなかに<炭素>は、水分や他の成分を除けば、数分の一しか、含まれていない。だから、チップや菌床などの<炭素資材>を、たとえ10トン畑に撒いたとしても、<炭素>量にすれば、3トン前後かもしれない。

 それにしても、それだけ畑に撒けば効果がある、あるいは、効果があるかどうか、比較試験ができるとして、問題は、そんなに多量の炭素資材で畑を覆うことが、どこでもだれでも、経営的に、労力的に、また、実際的に可能なのだろうか。

 「たんじゅんさん訪問」第2回の福岡の山下公一は、炭素資材が手に入らないので、大量の草を切って入れたり、野菜くずや紙を撒いて、苦労されていた。

 山口農園も例外ではない。
 廃菌床は町の中で手に入るが、トラックで取りに行って、1500円する(今朝広さんの特価らしい)。一回に850キロぐらい積める。それを一反10aに撒いても、2町(ha)では、相当な額になる。だから、年に2,3回撒くのが現状だ。すると、反当たり、年に廃菌床でせいぜい2~3トン、4500~6000円となる。(若者が取りに行くと、軽トラ一杯で、1,500円だそうで、それは、300~400キロだから、1年に2トン入れても、一反1万円ぐらい費用がかかる)。

 とても、年に反当たり炭素資材を10トンなんて、経費的にも、実際的にも、不可能に近いといえよう。
 だがしかし、それは、現在や過去を固定して、見て、考えている。
 未来側から観れば、みんなが生き生きと生きれるようになってある。とすれば、どうだろう。

 日本には、炭素資材はありすぎるほど、余っている。ただ、それが現在まで生かされていないだけと観える。
 実際、山口農園の周りは、高い草が茂り、若者たちは、周りの草を刈って、畑に入れている。でも、草だけでは、炭素量は知れている。

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炭素資材に囲まれて

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草を敷き詰める

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炭素資材を待っている

 ぐるりと囲む森の木々は、手つかずで、間伐を待っている。
 いずれ、次のような未来が、そう遠くないうちに描けてこよう。

 自治体の応援のもとにできたNPO<森と畑>?の若者たちが、木々の間伐を請け負い、それを大型破砕機でチップ化し、農家にトラックで配送してまわりながら、中古のリフトを改造したものでチップを受け取り、これも中古の田植え機を改造した散布機に詰め替えて、畑に撒いていく。

 未来側から観ながら、今を眺めると、山口農園の難問も悩みも、すべて未来のための一里塚。
 山を下りて、見送ってくれた、「また、春に待ってます」という若者の笑顔が、それを語ってくれている。

 ありがとうございます。

 来春の再会が楽しみだ。畑が、若者がまっている・・・・・。

じつは農は終わりかと

 帰り、静岡まで17時間の運転をしながら、ふと、今朝広さんの言葉が浮かんできた。

『じつは、自分の代で、農は終わりかと、昨年までは思っていた。ところが、昨年暮れ、餅つきをやろうと、数人で計画したら、何と150人も集まってしまった。お正月も100名ぐらい。

 なんだか知らないけど、宣伝したり、農業を勧めたこともないのに、このところ、いろいろな方が寄ってくる。特に若い方、しかも、農業に縁のない方が、次々と尋ねてくる。

 今年4月には、林幸美さんが、2度目、綾町に来てくれ、農は終わりなんて言っておれなくなった。

 自分の役割は、見本になる作物を育てるしかない。それには、土に力をつけること。
 ボクは、人に教えることは得意ではない。作物を育てるのが楽しみ。

 いままでは、それが週に3日しかできなかった。ところが、こんなに若者が寄ってきてくれて、配送を助けてくれ、いずれ一週間丸まる、一年中、畑ができるようになると思うと、わくわくする。
 そこまで行かなくても、いままでよりも、一日で、2,3時間余裕ができるだけで、やりたいことがやれる。・・・・・・・』

 昨年、もう農業も終わりだとしていたのとは、大違いだ。おまけに、娘3人のうちの二人までが、今年来た若者と結婚しようとしている。

 地道に、安心して食べられる野菜を栽培してきた28年の実りが花咲き始める時。自然の計らいなのであろう。
 自然は、いきな計らいをするものだ。

*    *    *

 そうなのだ。

 人が寄って、足し合えば、響き合えば、できないことができる。 もともと、自然は、そうできている。未来から観れば、そうなってある。

 あまりに、いままで自分が自分が・・で、自然の姿から外れてきた。

 そろそろ、自然のままに、自由に、溶けあうトキが来ているのかもしれない。頑張らないで、無理なくできるトキが。

 反自然は、無駄が多く、頑張りになる。

 不自然でもいいが、反自然はまちがい。

 なんだか、とっても、宮崎が近くなったなと感じながら、東に、東に、車を走らせた。

 ありがとうございます。

============================

補足

<空気>は必要で<水>はいらない

 この農法で、炭素資材を、畑に供給するのはいいが、すぐにトラクターで、すき込みがちだ。農業経験のある方は、「炭素循環農法」になっても、当然のようにそうする。

 しかし、それは要注意。撒いた炭素資材が、無駄というより、マイナスになりかねない。

 発酵型の土には、<空気>が必要で、<水>はいらない。

 深い土中では、空気が少なく、水が多い。

 まだ、十分団粒化していない畑だったり、そのあと、雨が降り続いたり、あるいは、水位が高い畑では、いくら大量に炭素を畑に撒いても、それを深く土中にすき込むと、それは、発酵の土にはならず、腐敗になってしまう。

 発酵型の微生物に、<水分>はいるが、<水>はいらない。<水>は発酵を妨げる。

 山の緩やかな傾斜地では、水の道が畑を浅く流れている可能性もある。

 元気に育ちかけた野菜が、雨が降り続くと、とたんに、色が悪く、虫が食べだすという場合は、畑を掘ってみると、水が湧いてくることがある。

(その場合は、畑の上端と両端に、水路を掘る必要がある)。

                                            第3回 終わり
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たんじゅん 

Author:たんじゅん 
「虫がつく野菜は、人間の食べ物ではない、虫のエサ。人間の食べ物は虫がつかない野菜。虫も野菜も人も、すべてが生き生きとしている。もちろん、お百姓も未来の大人も・・・」。
それが、自然・天然の仕組みと聞いて、びっくり、納得。
人間の側からではない、天然の側からのたんじゅんな農法は、もしかすると、戦争のない平和で豊かな世界の一つの実験、実顕ではなかろうかと、その実践報告を集めている。
連絡先メールアドレス tanjun5s@gmail.com

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